キミが欲しい、とキスが言う

「それに、浅黄にも無理はさせたくないし。いいとは言ってくれたけど、父親ができるとなればちょっとストレスにもなるでしょう」


最近、浅黄はよく笑うようになった。
幸太くんに聞いたところによると、金髪を変と言ってくる同級生に対しても、「僕のお父さんはアメリカ人だったから」とはっきり答えるようになったらしい。

親子遠足の時のことは、人の噂にはのぼったようだけれど、浅黄が動じないので突っ込む人は少なかったという。

“お父さんだけど、お父さんじゃないんだ”

幸太くんから聞いた、浅黄の言葉だ。
「俺、意味わかんなかった」と彼は続けたけれど、私には浅黄のなかでちゃんと整理がついているんだなと理解できた。


子供はいつまでも子供じゃない。
浅黄はもう、自分で考えて行動できるくらい成長したんだ。
だから私もこれからは、浅黄になんでも話して理解してもらおうと思う。


「……幸紀くんがそういうなら仕方ないか」


なぜか父は馬場くんに弱いみたい。
この日の話し合いで、家は借用という形を取ることに決まり、ちゃんと挨拶が済むまではとりあえず同棲という形で一緒に住むことになった。


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