キミが欲しい、とキスが言う


「変わらない。でも今度扶養家族ができる」

「はぁ?」


俺よりも早く声をそろえて返答するのは、高間さんと仲道さん。


「馬場、それって」

「嘘だろ? だって、お前口説いてるって言ったのが、たかだか数ヶ月前だぜ?」


焦りだす高間さんに、馬場さんはにやりと笑って見せる。


「数ヶ月あれば十分っすよ」

「マジかー。詳しく聞かせろ!」


馬場さんのコップにつがれる日本酒。
いや、だから、高間さんは人のこと喜んでいる場合じゃないんじゃ……。

俺の心配をよそに、高間さんはご機嫌になるばかり。
そのわきで、なぜか仲道さんが手酌で日本酒をがぶ飲みし始めた。


「ちょ、仲道さん。どうしたんですか、最近酒弱いって言ってたの自分じゃ」

「うるさい。いいんだ、今日は飲む!」


既婚者はいじける必要なくないですか?

そう突っ込みたかったか、もはや状況は俺の手には負えそうにない。


結局、終電ギリギリになり、一番終電の遅い馬場さんだけが間に合い乗っていく。残された俺たちは、皆でタクシーを折半することにした。

途中で高間さんを下ろし、次に仲道さんのお宅へ向かう。しかし、走っている間に仲道さんは寝てしまい、夜分だというのに玄関チャイムを鳴らす羽目になる。
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