先生は私の旦那様
「波瀬川君、ありがとう…もうここだから」



「やっぱり稀美果はお嬢様だな、こんな大きなお屋敷に住んでるなんて」



尚樹は今まで見た事のない長い塀で囲まれた屋敷に目を見張る。



「別にお嬢様じゃないよ!家は古いし…それに…私はお嬢様だなんて思っていないから…皆んなと同じ…」



「分かってる。俺は稀美果をそんなふうに見てないから!ちょっと驚いただけだから…俺さ…嬉しかったよ…稀美果が俺の事好きだって言ってくれて…」



尚樹は真っ直ぐ稀美果を見つめる。



え、波瀬川君?何言ってるの?

いつ私が好きだって言った?

そう言えば碧もそんな事言っていたっけ…

どうして二人ともそうなるんだろう?




もう日が暮れ暗くなっているが街頭のお陰で互いの顔はよく見える。



「ずっと好きだったから本当に嬉しかった」



尚樹の顔を見れば冗談ではなく真剣に言っている事が分かる。



「波瀬川君、ちょっと待ってくれるかな?いつ私が好きだって言った?そりゃー友達だから嫌いじゃないし」



「もういいよ!そんなに照れなくて」



え?照れるってなに?……

何言ってるの?……



稀美果は波瀬川の言っている事が分からず首を傾げる。



波瀬川尚樹はフッと笑うと一歩、そして一歩と稀美果に近づき稀美果の肩に手を置く。



「ちょっちょっと!波瀬川君!どっどうしたの?」



稀美果は驚き近づいて来る波瀬川尚樹の顔を制する為、彼の胸を両手を当て必死に波瀬川を押しやる。



その時二人のすぐ横で

ドンッ!!と地響きの様な大きな音。

それは壁ドンではなく、直寿の足による塀ドンだった。



そして驚く稀美果と、波瀬川尚樹に怒声が浴びせられた。



「俺の嫁に手を出すな!!」








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