瀬戸さんと水無月くん
『ほんとに仲良しだねえ』


なんて呑気に笑う友人は、私がパンよりご飯派であることを知っていながら、そんなことを言うのだ。
でも心の中ではなんだかんだ言いながら、私は結局水無月くんが置いていったパンを黙って食べる。


『美味しかった?それね、駅の近くのデパートの地下にあるパン屋の新作パンなんだけど、試食させてもらったらすごく美味しかったから、瀬戸さんにも是非食べてもらいたくて!』


そう言って嬉しそうに笑って、聞いてもいないのにオススメのパンについて語り出す。

水無月くんはいつだって自由奔放で、残念なイケメン街道まっしぐらなのだ。
そんなマイペースで変わり者な水無月くんだからこそ、困ることも大変なこともあるが、一緒にいて楽しいことも実は多かったりする。

はぐはぐとおかかのおにぎりを食べながら、誰もいない隣の席を見つめる。
頭の中には、こちらを向いて笑う水無月くんの姿があった。

体調が悪い時にメールをするのも迷惑だろうと思ってあえて連絡はしていないが、今頃彼はどうしているだろう。

まだ、ベッドの上で熱にうなされていたりするのだろうか……。
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