変わらぬ愛なんて、あり得ない!【甘い香りに誘われてⅡ】spin off

手放したくない温もり

イタリアンのお店から、呆然としながら、なんとか帰宅した。

『俺の恋人として、そばにいて欲しい』

ムカムカする。

奥さんがいるのに、何てこと言うんだろ。

だいたい!どうして今になって言うのよ。7年前に聞きたかった。

それに、あの第3会議室で抱き寄せられた時に、気付いたんだ。

駿に抱きしめられて、懐かしさは感じても、恋人同士が触れ合うような、甘美な感覚はしなかった。

私が抱きしめて欲しいのは、もっと温かくて、力強くて、たまに意地悪な……………………えっ?

綺麗に弧を描いて笑う矢野さんが、頭に浮かんだ。


私……矢野さんの事が好きなの?


まさか……

だって、私はもう恋はしないと決めたんだから。


ブンブン首を振る。

矢野さんには、三嶋さんがいるでしょ。

ムクムクと膨れ上がりそうになった感情に蓋をした。






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