年の差恋愛

脅しじゃなかった

亜美と茂もマンションに帰った。今夜から、毎晩2人でいる事にした。

結婚は、まだまだできそうにないけれど、もう、片時も離れていたくなかった。

まだ今は、2つの部屋を借りたまま、後々は、よそのマンションに引っ越す予定だ。それまでは、2つの部屋は、借りたままにしておく事にした。

…朝も昼も夜も、ほぼ24時間一緒に居られる事が、何より幸せだった。

…週明け、仕事の為、茂は先に出社したのだが、始業時間になろうとする頃に、専務室に呼ばれた。

「…失礼します。おはようございます、専務。大事な要件があるとの事ですが、一体なんでしょうか?」

「…言わないとわからないのかな?」
「…」

…分からないわけじゃなかった。専務はきっと、常務の娘との縁談の事を言いたいのだろう。茂は、何も言わず、専務を見つめた。

「…常務の娘さんは、気に入らないか?」
「…そういう訳ではありません」

「それじゃあ、何故断った?」
「…私には、大事な婚約者がいるからです。大体、縁談の話を前もって聞いていたら、常務の娘さんを傷つける事なく断る事が出来たのに、何故教えてくれなかったんですか?」


…茂の言葉は、最もだ。何も知らされず、突然縁談の話になり、動揺し、困惑した。そして、常務の娘、美智子だって、会えるなら、期待してもおかしくない。


「そんな事はどうでもいい。婚約者とは別れなさい。そして、常務の娘さんと、結婚しなさい。そうでなければ、昇進の話はおろか、この会社にすら、居られなくなるが、それでもいいのか?」

「…」

…美智子と、同じ事を言う専務に、怒りが込み上げた。茂は今まで、会社の為に、自分を犠牲にして頑張ってきたのだ。その仕打ちがこれかと、怒りが収まりそうになかった。
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