百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
遥は、じぃっ、と私の顔を見つめ
そして理解したように「…あぁ…。」と
低い声で呟いた。
「俺、お前の部屋に引っ越してきたんだよな。」
私はそれを聞いて言葉にならない気持ちがこみ上げてきた。
引っ越しじゃないでしょーが!
遥はただの“居候”だってば。
遥は、布団の中に顔を埋めるようにして、私に少し近づいた。
「……ん……まだ寝る……。」
遥は、きゅっ、と布団を抱きしめて
また、すやすやと浅い眠りについた。
な……
なんなのこいつ!
本当に自由人なんだから!
私は、少しモヤモヤを心に抱えたまま一人でベッドから出ると、朝食の支度を始めた。
冷蔵庫に向かい、扉を開ける。
中には、卵や野菜などがいつもより多く入っている。
実は、遥が「一ヶ月も冷蔵庫開けなかったら、賞味期限切れるから。」と言って
自分の部屋から食材を持ってきてくれたのだ
…うーん。
遥と暮らすのはちょっと心臓に悪いけど
正直助かるな。
二人分作るのも、ぜんぜん苦じゃない。
私はただでさえ貧乏生活だし、ご飯はなるべく節約を心がけてるから、おかずが多い日は少し嬉しい。