百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


その時

ふわり、と頭に温かい手の感触がした。

髪の毛を、優しく撫でられる。

ふっ、と顔を上げると、今まで見たこともないぐらい優しい顔をした遥が目の前にいた。


「…バーカ、なんて顔してんだよ。

俺は詠にそんな顔させる為にここに来たんじゃねぇぞ。」





すっ、と遥が私の頬に伝った涙を拭う。

遥の、吸い込まれそうな瞳から目が離せない。


「……詠………無事で良かった…。」


「…!」


その言葉を聞いた瞬間

ぽろぽろと再び涙が溢れた。

遥は、そんな私をぎゅっ、と抱きしめる。

遥の確かな体温を感じて、私は胸がぎゅっ、と苦しくなった。


……遥………

遥…………!


私は、遥を抱きしめ返して口を開く。


「遥…!遥が私のせいで妖界から出られなくなるなんて絶対にダメ……!

私が代わりにここに残るから……!

遥は、私の鬼火銃で元の世界に戻って…!」


すると、遥は私の耳元で優しく囁く。


「……んなことするわけねぇだろ。

お前は、周と元の世界に帰れ。」



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