百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
………やばい………!
ぎゅっ!
咄嗟に目をつぶる。
その時、ぐっ!と背中に力強い感触を覚えた
……!
見ると、宙に浮いた遥が、私の体を抱き抱えている。
すると、遥は、私を見下ろすなり、大声で怒鳴った。
「……ったく、おめー何やってんだよ!
目の前で死ぬ気か?バカ!」
遥は、じろ、と私を睨みつける。
私は、そんな遥に、にっ、と笑って言った。
「……ん、捕まえた!
……話してよ、願いの続き。」
「……!」
遥は、私の言葉に一瞬動きを停止した。
それから、はぁーっ、と息を吐いて呟く。
「……っとに、変な女。」
そう言った遥の横顔は、どこかいつもより柔らかく、何かを思い出すような顔をしていた。
……なんだろう。
今、目の前にいる遥は、いつもの遥じゃないみたい。
……妖を殺した時の遥とも違う。
遥は、すぅっ、と舞い上がって、私を私の部屋の窓枠に座らせた。
そして、少しの沈黙の後口を開く。
「…俺の“願い”は、あの狐野郎との契約を無効にすること…。
今の俺は、葛ノ葉 紺に逆らえない。」