百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
“契約”…?
思いもよらない言葉に、少しの動揺が胸の中に広がった。
…どういうこと?
“葛ノ葉 紺に逆らえない”って…。
その時、私は遥のシャツの襟元から覗く鎖骨に見える“あるもの”に気がついた。
私は咄嗟に遥の襟元を掴む。
「…っ、おい!何すんだエロガキ!」
私は、遥の言葉を無視して、尋ねる。
「これ、“竜ノ神の証”…?
遥、加護者だったの?!」
そこには、私の胸元のアザと同じような印が付いていた。
確かに竜ノ神の証で間違いない。
すると遥は、はぁ、と息を吐いて言った。
「…そーだよ。お前と同じ。
ま、加護者の先輩とでも思っとけ。」
私は、遥の印をじっ、と見つめ、そして首元に光っている鬼火銃に目をやった。
「…遥は、竜ノ神の宝石を手に入れたら、自分の願いを叶える為に使うの?」
私の言葉に、遥はまっすぐで、澄んでいる瞳で私を見つめた。
そして、静かに呟く。
「…俺は、“俺の願いを叶えるため”に、カンパニーに宝石を差し出す。
…悪いけど、お前にも、周にも…宝石を渡す気はねぇから。」