居場所をください。



「俺さ、美鈴とか父さんのためなら

自分のことなんてどうでもいいんだよ。

美鈴もそうだろ。そういうとこ俺に似てる。」


「……………だから?」


「美鈴に言ったら美鈴は貴也のために

貴也の母親のために必死になるだろ。

なにかしてあげなきゃって。」


「それのなにがだめなの?

私は彼女なんだからそう思って当然じゃん。」


「簡単なことじゃないんだ。

人のために何かをするって簡単なことじゃない。

簡単に言えることじゃない。」


「でも…「あの貴也でも活動休止するくらいなんだ。」


え……………


「あの貴也が活動休止するくらい

人のために何かをすることは簡単なことじゃないんだ。

貴也はこの世界のやり方をあまり好きじゃない。

それでも仕事はいつも完璧にこなしてきた。

演じることは好きなんだよ。

この仕事があいつは好きなんだ。

そんなやつが活動休止するまでなんだ。

美鈴にいって、美鈴が手伝ったら

美鈴の歌手生命に影響するかもしれないって

きっとあいつはそこまで考えてたんだ。

お前の仕事まで奪うわけにはいかないんだ。

わかってやれ。」


「……………だから嘘で固めてたの?

全部嘘でごまかしてきたの?

私は何も知らないで笑ってたの?

みんなは知ってたのに

私だけ何も知らずに笑ってたの?」


そんなの……………嬉しくない。

全然嬉しくない。


「きっと貴也は美鈴の笑顔を

ずっと見ていたかったんだろ。」


「……………会いたい。話したい。

貴也はどこにいるの?」


「実家にいる。

今日、病院へ母親を迎えにいって

今日から家で一緒に過ごしてる。」


「……………実家、か。

知らないや。

長曽我部さんは教えてくれないんだよね。」


「悪いな。」



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