居場所をください。




「いらっしゃいませー!

お一人様ですか?」


「あ、いえ。

金髪の若い女の子、来ていませんか?」


「いえ、そのようなお客様はまだ…。」


「そうですか。わかりました。」


ったく…どこ行ったんだよ。

バイト先はまだ開いてねーよな…。


とりあえず店が開いてないんじゃ

俺は入れねーし。


手詰まりか…。

日曜日だし…学校いってみるか。


俺は学校の方に車を動かした。



でもあいつが学校に行くことは可能性低いよな。


俺、なんにもわかんねーな…




しばらく走ると遠くに金髪頭が見えて

俺はスピードをあげた。



……違うか。男じゃん。



……………あれ?


「ねぇ、君美鈴の友達だよね?」


俺は車の窓を開けて男に話しかけた。


「え?あぁ、美鈴の保護者か。

なんか用ですか?」


「え!美鈴の保護者!?」


生意気そうな金髪の男と

彼女らしき、どっかで見たことある女の子。


「美鈴知らない?」


「美鈴?知りませんけど。

夏音さっき電話してたじゃん。」


「うん。

海じゃないかなー?

アナウンス聞こえたし。」


「海か…。

美鈴、なんかいってた?」


「私が貴也くんのこと聞いたから

そのことで電話くれたみたいです。」


「貴也のこと、何て言ってた?」


「引っ越しちゃったみたいで

会えなかったし何も聞いてないからわかんないやー

って、少しなげやりな感じで…。


貴也くん、美鈴に何も言わなかったんですか?

何も言わずに勝手に引っ越しちゃったんですか?」


「うん、そうだよ。」


「そりゃひでー話だな。」


金髪の…確か高橋くんだっけ…。


「あいつ、そういうのが一番嫌なのにな。

誰かに置いていかれるのが一番嫌なのに

彼氏の癖に彼女の一番嫌がることするなんてな。」


「貴也も貴也なりにあいつののとこを考えてるんだ。」


「どーせ、美鈴の邪魔になるから…

とかなんだろうな。」


「……………それが?」


「美鈴はそんなこと関係ねーんじゃねーの。

あんたらは歌手の五十嵐美鈴しか考えてねーんだよ。

あいつはそういうの関係なしに

誰かのそばにいたいだけなのに

美鈴のため、美鈴のためっていうけど

それは美鈴が五十嵐美鈴でいられるためにってことで

本来の美鈴を求めてねーんだよ。」


「俺はそんなつもりないけど。」


「それが美鈴に伝わらなきゃ

なんの意味もない。

歌手じゃなくてもそばにいていいんだって

あいつが思わなきゃ意味ねーんだよ。」



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