居場所をください。



「俺が早く働けば生活費だって

サポートできるだろ。

二人の収入ならあんなポロアパートだって

抜け出せるだろうし。」


「一回大人になると

もう子供には戻れねーよ。」


「……どういう意味?」


「確かに金はもらえる。

金に余裕はできる。

だけど時間の余裕はなくなる。

自由もなくなる。

大人になって思うんだよ。

ガキっていいなって。

俺も、たぶん美鈴も思ってる。

無邪気に遊んでた頃には戻れない、ってな。

精神的にも年齢的にもガキなのに

大人の世界に入るってのは

思ったよりも大変だぞ。

今までの常識が通用しなくもなるしな。

責任ってものまで付いて回る。

その重さもわからないままな。

ガキはガキらしく、親に甘えとけよ。

甘えたくても甘えられないやつもいることを

忘れんじゃねーよ。」



俺はそれだけ言って、寝室へ戻った。


俺や美鈴にはそんな選択肢をくれる人は

誰もいない。物心つく前から

俺らに選択肢なんかなかった。


残されたのはゴールのない道を走る

ただそれだけだった。



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