居場所をください。
「今までずっと
お話になられなかったと思うんですが
今回はなぜ本当なことを
話してくださったんですか?」
「沙耶香と別れてから
美鈴と付き合うまでの期間が短かったため、
美鈴への気持ちが軽いものだと
皆さんに思われるのが嫌だったからです。
18歳、まだ学生の俺たちが一緒に住んでることを
よく思わない方も多くいらっしゃると思います。
だから今回、ちゃんと本音を話してまで
美鈴との付き合いは決して軽いものではなく
真剣に交際していると知ってほしかったからです。
………それに、偽りだらけの俺は
もう嫌なんです。
俺はずっとこの世界から逃げ出したかった。
偽りだらけのこの世界が嫌で仕方なかった。
だけど辞める勇気も俺にはなかったんです。
だから誰か俺を連れ出してほしい
そう思うようになりました。
そんなときに来たのが隼也でした。
隼也はいつも自分をしっかり持ってて
この世界には染まらない強さを持っていて
………俺の憧れでした。
俺はそんな隼也と過ごすことで
さらにこの世界から逃げ出したくなりました。
隼也がかっこよくて、強くて。
本気で悩み始めた16歳になった頃
美鈴が俺の前に現れました。
美鈴は俺と初めて会ったときから
俺のことを松野貴也として見ていなくて
俺を先輩としてみることもなくて
………そういう美鈴と話してるのが楽で
素直な俺でいられる場所となっていきました。
初めて人間らしい感情を持つようになりました。
この世界で生きてきた俺には
居場所なんかずっとなくて
ずっとここで俺は居場所を探していました。
美鈴は俺が俺らしくいられる
唯一無二の存在なんです。
頑張らない俺を認めてくれる
そんな美鈴が俺にとって、本当に特別なんです。
どうかそんな想いだけは伝わってほしくて。」
初めて聞いた貴也の本音に
私は心を打たれた。