居場所をください。
それから私たちは徒歩15分の距離の
渋谷駅周辺までタクシーに乗ってきた。
ちょうど止まってたしね。
そしていつものファッションビルへと
私たちは吸い込まれていく。
「でも長曽我部さんも来るなんて
ちょっと珍しいよね。」
「ちょうどもうすぐ
私服撮影の仕事が入ったからな。
次は3ポーズな。」
「なんだ、仕事か。」
そりゃそうだよね。
この忙しい人がわざわざ買い物に
ついてくるわけないか。
「だから仕事でも使えるやつも選べよ。」
「はいはい。」
それから長曽我部さんも
五十嵐美鈴の仕事用の私服のために
カチャカチャと服を見ていた。
女子高生に紛れてね。
30歳か。
私の想像してる30歳って
もっとおじさんだったのに
目の前にいる30歳は全然30歳には見えない。
あんまり歳を取らないタイプの人なのか
まだまだ若々しいし、流行りも理解してる。
オシャレにも気を付けてる。
30歳ってこんなもんなのかな。
「あ、これは?」
そういって長曽我部さんがとったのは
デコルテから肩までがっつり開いた
オフショルのトップス。
「いいかも。
カーキって男ウケは微妙かもだけど
女ウケはわりといいんだよね。
この形でカーキっていうアンバランス感も
あんまりなくて独特でいいかも。」
「しかも後ろ。
けっこうがっつり開く。」
後ろはうなじから下ががっつり開いてて
そして大きなリボンになっている。
「こういう露出するやつ
欲しかったんだろ?」
「え、聞いてたの?」
「普通に聞こえるわ。」
うわー、まじですか。
なんか恥ずかしいんだけど………