居場所をください。



部屋に入ると机の上に

ひとつのカギが置かれていたことに気づいた。


「………美鈴はこれも置いてったのか?」


「さぁ?俺にはよくわかんねーけど

少なくとも母さんじゃないだろ。」


「………俺、美鈴のとこ行ってくるわ。

飯は先食ってて。」


俺はカギをひとつ握りしめて

部屋を出ようとした。


「ちょい待った。」


そんな俺を、弘希が止めた。


「なに。」


「そういうとこなんじゃねーの?

離婚した理由。

母さん、父さんを喜ばせるために

わざわざここきて飯作ってんのに。

………繰り返すなよ。」


………そう、だな。


「悪い。

とりあえず里美と話すわ。」


しっかりしろ、俺。

これじゃ昔の俺じゃねーか。

子供になに言わせてんだよ。


………よし。


「里美、ちょっといい?」


「ん?」


「俺、ちょっと美鈴のところ行ってくる。

いろいろ話もあって…」


「………今じゃなきゃダメなの?」


「すぐ戻るよ。

飯までには戻る。」


「………ひかるってさ、いつもそうだよね。」


「…ごめん。」



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