居場所をください。



「………あ、白のパンツだ。」


「俺は白は履かねーから。」


「あー、うん。」


………長曽我部さん、結局去年も

白のパンツは買わなかったんだよね。

挑戦できずにライトグレーにしたんだっけ。


今年は買うのかな…


「どうした?」


「んー…これ買おっかな。」


「は?」


「長曽我部さんに。」


「あぁ、そういうこと。」


「私も本当どうしようもないよね。」


「いいんじゃね?

そういう変わらないのも美鈴らしいじゃん。

無理して変わんなくていいと思うけどね、俺は。」


…変わらなくてもいい、か。


「それに、美鈴の唯一の家族だろ?」


「そうだけど

でも長曽我部さんはそうじゃないし」


「それは美鈴だってそうだろ。

施設の人たちだって家族だろうし

結婚すりゃまた新しく家族ができる。

ひとつである必要はねーんじゃねーの?

いいじゃん、変わらなくて。

そうやって無理してると、余計に

長曽我部さんも心配するし。」


「………うん、そだね。」


先に進まなきゃ。ずっとこのままじゃダメ。

長曽我部さん離れしなきゃ。

そう思えば思うほど余計に寂しくて

長曽我部さんが頭から離れなくなる。


………いいんだよね。

長曽我部さんとの間だけ

時間を止めたままでも。


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