居場所をください。



そして、その日の夜

仕事を終えてからご飯を作り

ちょうど出来上がったところで

貴也は帰ってきた。


「おかえり。

遅かったね?」


「撮影が長引いて。」


貴也はそういうとソファに座ることなく

私を抱き締めてキスをした。

軽く短いものから、長く深いものまで……


「…どうしたの?」


貴也らしくない。

寝るときたまにキスはするけど

そこまでベタベタする方じゃないから。


「んー…今日キスシーン撮ったから。

美鈴で消毒。」


「……ふふ、なにそれ。」


キスシーン、なんて

私の嫌いなワードが出てきたのに

私で上書き保存をしてくれてると思うと

なんだか嬉しくなってしまった。


そんなことでキスシーンのことを忘れるなら

私は何度だってキスをするよ。

……そんなことがなかったとしても

貴也なら大歓迎だけどね。


貴也はそのあと軽くキスを落とし、

私から離れた。


「あんますると理性が崩壊する。」


なんて、私に背中を向けていうけど


「別にいいよ?」


貴也が相手なら、大歓迎だから。


「…俺がよくねーの。

美鈴とは軽い気持ちで付き合ってねーから。

真剣だから。」


「え……」


振り返ってそう言った貴也の顔が真剣で

私の動きを止めた。

頭が空っぽになった気がした。

そんな風に考えてくれてることが嬉しくて

止まった体と空っぽになった頭は

すぐに幸せというものに包まれた。


「…早く、飯にしよ。」


「うん!」


やっぱり私はこの人がだいすきだ。


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