居場所をください。



「……私もいつか

社長と二人でラーメンとか

行ける日が来るのかな」


私だけを特別扱いしなくなる日が…

私にだけ、距離をおかなくなる日が……


「まぁあと数年は無理じゃね?」


「……なんで?」


「まだ新人だから。

社長と二人で飯なんて

まだ早いっつーの。」


そういってお肉をまたひとつ

口に運ぶ貴也を見て

なんだか笑ってしまった。


嬉しくなってしまった。


そうやって、平等に見てくれているのが。


「だいたい、隼也だってまだ

社長と二人で飯いってねーんだから。」


それは私と社長が親子だからとか

私が社長に捨てられた子だからとか

そんなことはすべて排除して

私をあの事務所のタレントとして

他のタレントと同様に扱ってくれたことが…


「……そうだね。」


いつもいつも、長曽我部さんが

私を特別扱いしていると

みんなから言われてきたから。

何度も、何度も……


長曽我部さんが出てくるのは珍しいとか

私にだけ優しいだとか

私にだけに厳しいだとか……


それが嬉しくないわけじゃない。

私にとって長曽我部さんは

一番特別な人で、一番大切にしてる人で、

長曽我部さんの言うことなら

なんだって聞いてきたから。


……だけど、それだけじゃなくて

みんなと同じ目線、同じ立場

同じ経験というものが

私にもほしかったんだ。


みんなの当たり前が

私もほしかったんだ。


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