居場所をください。



「…あ、そ。

わかったよ。悪かったな。」


父さんがそういうと

この車の中はシーンと静まり返っていて

かなり気まずい空気の中、

貴也はスマホを取りだし、

誰かにLINEをしていた。


……とにかく空気が重い。

ピリピリしてる、というよりかは

どんよりしてる。


じゃっかん美鈴がキレてるのは

離れていても伝わってくる。

…でもやっぱどちらかといえば

寂しそうな背中をしている気がした。


そんな静かな空間に

ポロン、と俺のスマホがなった。


"もうすぐ隼也が乗る。

無駄に明るく入ってくるから

お前も無駄に明るくしろよ。

そしたら美鈴も長曽我部さんも

気つかわせて悪いなって思って

二人とも話し始めるから。"

と貴也からLINEが来た。

……けど、

こっちは気を使ってますよ、アピールかよ。

それってどうなわけ?

まぁ空気は壊れるかもだけどさ、そりゃ。


かと思えば車が止まって

「俺が呼んできます。」

と言って、貴也は下りていった。


……にしても、ここ?

大谷隼也ってこんな

普通のアパートに住んでんの?

結構テレビで見るけど……


美鈴と貴也はあんないいマンションなのに

すげー格差だな、これは。


やっぱ、稼いでるやつは

あんまテレビに出たりしねーのかな。


「明けましておめでとうございまーす!」


そこに、無駄にテンションの高い

大谷隼也が車に乗り込んできて

俺の前に座って、

さっきまで俺の横に座ってた貴也は

大谷隼也の横へ座った。



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