居場所をください。
おまけ。

卒業祝で高橋と焼き肉に行ったときのお話。




「つーかさ、美鈴っていつも

歌手になった理由を聞かれたときに

居場所がほしかったからって言ってたけど

結局見つかったわけ?居場所って。」


「んー?

っていうかね、わかったんだよ。」


「なにが。」


「居場所っていうのは求めるもんじゃないんだよ。

自分で作り出すものなんだよ。

探したって見つかるわけないじゃん。」


「……意味がわかんねーんだけど。」


「だからたとえば高橋ならさ、

あんたは私に友達になりたいって言って

私に毎日話しかけてきたでしょ?

私が一高からいなくなっても

よく会いに来てくれたりさ。

それはあんたが私の横に居場所を作ったわけよ。

私はあんたのこと、

まぁ最初はどうでもよかったけど

だんだんあんたといるのが

本当に楽に思えて、大事な時間になったわけ。

だから、私も失いたくないなって思って

定期的に、忙しくてもあんたに連絡をして

こうやってご飯に行くわけよ。

そうやって、あんなのところにも

私は私の居場所を作った。


居場所っていうのは待ってても来てはくれない。

自分から作りにいかなきゃダメなんだって

私はやっとわかった気がするよ。」


「……なるほどなぁ。」


「だから今は、私の数ある居場所を

守り抜くだけのことだよ。」


高橋の親友の座も

貴也の嫁の座も

長曽我部さんの妹の座も

そして、ステージの上も

私は絶対に誰にも譲らない。


それを守り抜くためなら

私は私相手だって闘う覚悟だよ。


「なにより、言葉なんて

なにも必要なかったんだよ。

誰かを信じて努力してたら

そこがいつの間にか

私の居場所となってた。

ただそれだけのことだよ。」


ずっとずっと居場所は探してた。

だけど、それだけじゃダメなんだ。

自分から行動を起こさなきゃ。


「んー、おいしかった。」


「今日は高そうだな~。」


「そりゃお互いの卒業祝だからね、これ。」




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