居場所をください。



「午後は美鈴とファッション誌だったよな?」


「そうです。
美鈴はそれで終わりで、そのあとは貴也と打ち合わせです。」


「今日は美鈴のが先か。」


「それとこれ、美鈴の歌詞データです。
秋に出すシングルと、来年夏に出すアルバム数曲で、来年春に出すシングルはまだとのことです。」


「あぁ、わかった。」


歌詞チェック、なんてもう俺の仕事ではないのに
佐藤は必ず俺にも渡す。上田だけでもいいはずなのにな。


「そういえば小春、伸び悩んでますね。」


「まぁデビューしたばっかだしな。
しかもチーフマネはあの山村。
あいつ仕事しねぇからなー。」


「はは、なのにチーフマネにしておくなんて、長曽我部さんらしいですね。」


「ちゃんとやりゃできるのに。」


仕事できねぇやつに、そんな地位にはさせねーのに。
ちゃんとやりゃ、すげーできるやつなのに。


なんてことを話しつつ、食堂に到着。
やっと飯にありつけるわ。腹減ったー。


「長曽我部さーん!」


「うわっ!…って、また美鈴かよ…
そのタックルいい加減どうにかしろよ」


「だからタックルじゃないってば!!」


「で、なにしてんだよ。
美鈴今日は午後からだろ。」


「まぁ貴也は朝から撮影でいなくて暇だし、トレーニングにね。
このあとは佐藤さんとだし、ならここでご飯食べようかな、と。」


「で、俺がいたから奢ってもらおうとでも?」


「あわよくば。
サラダうどんね!」


あわよくば、とかいいつつ注文してんじゃねーかよ。
まぁいいけどさ。


「っていうか佐藤さん!
なんで美容院あんな遅い時間なのさ!!」


「だって美鈴ちゃん、大忙しだから。」


佐藤のその一言に、美鈴は静かになった。
俺にはいつもぶつぶつ文句いうくせにな。



< 4,416 / 4,523 >

この作品をシェア

pagetop