居場所をください。



……………誰もいませんように。


私は願いながらいつもの喫茶店に入った。



「いらっしゃい。」


よかった、誰もいない。

私はカウンターに座った。


「ミルクティで。」


「はいね。」


マスターはいつも優しく微笑んでいる。


「なにか悩みごと?」


「え……………」


「そんな顔してる。」


「なんか……なにもかもうまくいかない。

恋愛も、友情も、仕事も。」


「そりゃそんな日もあるでしょ。

人間だからね。」


「マスターもある?」


「俺も人間だからね。」


「そんなときどうする?」


「なげやりになる。

もうどうでもいいわって。」


「え、それでいいの?」


「そうすると大切なものだけ見えてくる。

結局どれも自分にとって大切で

投げやりにできなくなる。」


「……………で、どうするの?」


「ひとつだけ願いが叶うならって考える。

なんでもいい。

そうすると、一番大切なものに気づける。」


「ふーん…。」


「一番大切なものに気づけたら

次はそのためになにをすべきなのか

すぐに整理できるようになる。

ひとつうまくいくと、どんどんうまくいくよ。」


「そんなもんかな。」


「人間の悩みなんてそんなもんだよ。」


「そっかぁ…。」


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