居場所をください。



「ねぇ、マスターのファーストキスって

どんなんだった?」


「俺?好きでもないやつと成り行きで。」


「え!?」


「そんなんでも、俺にとっては大切な思い出。

そのあとそいつと少し気まずくなったけど

いつの間にか好きになってた。


ま、子供の頃の話で今は別のやつと結婚したけど。

でも今ではただの笑い話だよ。」


「笑い話?」


「楽しい思い出も辛い思い出も

思い出したくない思い出も

時間がたてば笑える思い出。」


「……………なるほどね。

それは何となくわかる気がする。

私、施設育ちだってことも

今では抵抗なく言えるもん。」


「今が幸せな証拠。」


「そうだね。

マスターって何歳?」


「35。」


「若いね。」


「16歳に言われてもね。」


「マスター子供いる?」


「いるよ。」


「ここ儲かるの?」


「貴也たちのおかげでな。

美鈴ちゃんももっと来て。」


「はは、わかった。」


……………ほかにお客さんいるのかな。



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