イヌオトコ@猫少女(仮)
さらに顔を寄せる遊月。


胸が張り裂けそうになった笑結。

何が起こっているのか、パニックになり、外に向かって走った。


ヨメ???


ヨメって言った!?


どういうこと?????



自分で感じたことのない感情に、

目の前が涙で霞み、通行人にぶつかって転んで、へたりこんでしまった。




「…あんた、サイテーだな」


葦海を睨み付け、笑結を追い掛ける鳶川。


とっさに言葉が出なかった自分を悔やんだ葦海。


「あっ、ウチ、トイレ。じゃあ」


言いっぱなしで逃げる遊月。


「えーっ?!」


一人になり、慌てて笑結を探しにいく。



「先輩!!やっと見つけた!」


あちこち探し回った鳶川が出入口付近のベンチで一人、

ぼんやりと座る笑結を見付けたのは、20分ほど館内を歩き回った頃だった。



案外広く、薄暗く、思ったより客もいて、大変だった。



「あっ、鳶川くん。ごめん。トイレも行ってたんだけど、混んでて」


見付けてくれたのが葦海でなかったことに、がっかりしていた。



鳶川に悪いと思いながら、もう気遣う余裕もなく、

中を見渡すふりでごまかしたつもりだった。



「もう、出ましょうか」


「でも…」


勝手に帰ったら、と


目の前に、2人の男が立ちはだかる。


20代くらいの、がっしりした体型で頭にタオルを巻いたダボダボの作業ズボンだ。


「お姉ちゃん、かわいいなあ。俺らと遊ぼうや」


「な、なんだ!?あんたたちは!?」


ここで怯んではいけないと、勇気を振り絞って声を裏返しながらも、笑結の前に立つ。


が、


あっさりとはね除けられて転ぶ。

「鳶川くん!!」


庇いに出た笑結の腕を掴むと、金髪の男が、肩に腕を絡ませてくる。


ぞくりとした。


「彼女に触るな!!」


掴み掛かるももう一人に腕を捻られ悲鳴を上げる。


「いい加減にしなさいよ!!」


火が付いた笑結が、絡んだ男の腕に噛みつく。


「いって!!このガキ!!」


鳶川を掴む男のすねを思い切り踵で蹴る。小さい方が小回りが利く。


不意を突かれ、放した隙に鳶川の腕を取り、走った。


「逃げるよ!!」


「は、はい…」


かっこいい、と思わず見とれた。

そのまま表に出た瞬間、


「あっ!!危ない!」


誰かが叫んだ。


「えっ…」


見上げると巨大な板のようなものが目の前に迫っていた。



とっさに笑結を庇いに出た鳶川。

「離れて!!」


別の誰かが叫んだ。


どすん!!


という轟音。




舞い上がる砂埃。




「救急車!!救急車!!」





2人は、気を失っていた。
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