rain
この恋の行方



どんよりと黒い雲が広がり


そこから細い雨が地上に落ちてくる


空を見上げて思う


地上までの旅は楽しかったのか、辛かったのか


長かったのか、短かったのか


地面に落ちて形を無くすことが、消えることが


本望なのか…




私もそろそろ、この旅を終わらせなきゃならないのかもしれない


彼の元から旅立たなきゃいけないのかもしれない


またくると信じたい幸せに向かって…











「もしもし? 暁?」


『貴子? なに、どうした?』


「この間、借りた傘… 今から返しにいくから」


『えっ? なんだよ急に』


「ちょうど暁のマンションの近くで仕事があるの
暫く雨が続くみたいだし、暁も傘がないと困るでしょ? 着いたらメールするね」


『傘なんてまた今度でい……』




会話の途中だったけど、私は暁との通話を切った
また今度なんて、いつの話になるのか…




はぁーっと溜め息がでた




東條暁(とうじょうあきら)
彼とは付き合いはじめて5年になる


いつも私の気持ちを考えてくれる温かい人
友達が言うには、私には勿体ないぐらい素敵な彼氏なんだそう


でもこれから、傘を返すって口実で私は暁に会いに行く
天気予報では夕方から晴れるみたいに言ってたけど


でも私は暁に傘を返しに行く


だって…




明日になると、この傘を返せなくなるかもしれないから


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