rain


私は合鍵を暁に投げつけてそこから走り去った




「貴子!!」




私を呼ぶ暁の声が聞こえたけど、無我夢中でそこから走り去った


どこをどう走ったのか全く覚えてなくて


こんな大雨の中、ずぶ濡れで走ってる私の姿を周りは見てみぬフリで




「ふふ、そりゃ不思議だよね…」




傘のないずぶ濡れのかわいそうな女の子にしか見えないよね


訳ありってバレバレだよね




結局、暁は追いかけても来なかった
その真実がすごく悲しくて


心のどこかで、待てよって追いかけてきてほしかったのかな


俺の話を聞けよって、抱きしめてほしかったのかな…




ポロポロと流れる涙は止まることを知らないようで


それが雨なのか涙なのか分からない状況にホッとしてる自分がいた




「ちょうどよかった… 雨降っててよかった…
傘持って来なくてよかった…」




もう私を守ってくれる人はいない


こんな雨の日に傘をさしてくれる人もいない


これからは自分で傘をささなければいけないんだ




私は暁という大好きな傘を


捨ててしまったのだから


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