rain


「…くせ… に…」


「…え?」


「何もしらねぇくせに!!何が別れようだ? ふざけんな!!」



俯いたまま、強く拳を握って
こんな暁、今まで見た事なかった


胸が苦しくて、心では今すぐ暁を抱きしめたいのに
頭ではダメだよと、別れようと考えている


心と体がバラバラで、私の中で何かが弾けた




「暁だって… 暁だって私の気持ち知らないくせに!!」


「知らねぇよ!!」


「この1ヶ月… 二人の楽しい姿を見て私がどんなに不安だったか知らないでしょ?」


「……」


「泣いてた事… 知らないでしょ?」


「じゃぁ、何でその時に言わねぇんだよ!」


「言える訳ないじゃない!! 暁が好きだから…
もう私のことが好きじゃないっていう真実が…
暁から直接言われるなんて怖くて聞けないよ!」


「貴子…」


「でも私が今… 一番辛いのは…
何もないって隠し通そうとしてる見えかくれしてる嘘よ!」


「違う… 全然違うんだよ、貴子!」




私の腕を掴んで
こんな悲しい顔の暁、初めてみた


だけど、もう遅いよ
そんな表情も嘘か本当か私にはもう分かんないや




「さよなら…」




私は暁に傘を渡し


ポケットから暁の部屋の合鍵を出して投げつけた


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