親指にリング、薬指に絆創膏
親指にリング

去年、私が高一の夏、春に一目ぼれしたばかりの二つ年上の先輩に告白した。玉砕覚悟だったのに、返事はなんとまさかのOKで。
それから1年、飽きっぽく女好きと悪名高い翔太くんの彼女で変わらずいられたことは本当に奇跡みたいなことで。

昨日の一年記念日を、大学生になった彼が一人暮らしする部屋で二人きり、祝えたことが幸せすぎて。夢かと思った。

だから、翔太くんの部屋の本棚の隙間にひっそり置かれたいかにもそれっぽい小箱を見つけた時、心臓が止まるかと思ったんです。青地に、白いリボンのかかったいかにもなソレ。

何を隠そうちょうど一か月前、お揃いの指輪がほしいな~ほし~な~と、ウザいおねだりしたばかりだったから。もちろん、プレゼントしてほしいって意味じゃなくて、二人でお揃いで買えたらいいなあっていう、願望のつもりで言ったんだけど。だってペアリングって憧れるじゃないですか。あと翔太君ってモテるから私のだよっていう印といいますか。見せつけてやりたいじゃないですか。

その時は軽く流されて、少しいじけたけど。でもでもでもでも。聞いてないふりして、こんな、サプライズ。嬉しすぎませんか? 普段鈍自分って感すぎて嫌になるのに、こんな時だけ気づいてしまう。私って。演技苦手なのになあ⁉

でもまさかまさか、さすがに違うかも。あんまり期待しすぎちゃいけませんよねと思って、気付かないふり。してたけど、どんどん時間が過ぎ、帰り際になってもプレゼント贈呈の素振りを見せない翔太くんに痺れを切らした。私は、図々しくも自ら聞いてしまったのだ。

思えばこれが間違いだった。めちゃくちゃに期待してた私は本当にアホです。

『翔太くん、その小箱は、もしやですが、』
『うん?』

指摘した私の視線に気付いた翔太くんは、ああ、と小さく笑うとそれを手にとってこちらに差し出してきた。
ああ、やっぱり私へのサプライズプレゼント!
えっ、どうしよう指輪なんて、えっ、サプライズだとしたら翔太くん隠すの下手すぎ。すぐ見つけてしまったよそんなとこも愛おしい嬉しいあっ私幸せで死ぬかも。泣きそう。

『これ? ……昔元カノに買ったけど渡す前に別れたやつだわ』
『……は?』
『ほしいなら成美にあげるね』

一年記念日のプレゼントが、まさかの元カノのお下がり。ちゃんちゃん。


***


「……と、いう経緯で受け取ったものがこちらになります」
「ゲッ」

カツ、と話の間手の平に隠し持っていた指輪を机の上に置けば、腐れ縁のクラスメイト仙崎と愛しの親友樹里はあからさまに眉をしかめた。
そして二人ともが息ぴったり、同じタイミングで指輪から目を逸らすとわざとらしく頭を抱え始める。

「何それ不吉すぎる! 早くしまって、不幸が移るから!」
「樹里サン不幸って!?」
「若干自慢げに話してるお前がこえーよ!」

そこまで言う? 不幸って移るんだ⁉︎
本気でドン引く友人たちに気圧され、そっとそれを左手の親指にはめる。

どうやら本っ当に元カノのお下がりだったらしく、身長が150センチ少しの私の薬指には少々ぶかぶかで、仕方なく親指に落ち着かせた。

きっと彼の元カノさんは、私より背が高く、私より指が長くてすらっとした人だったのかもしれない。どなたかは存じませんが、翔太くんから指輪をプレゼントしてもらえる予定だったあなたが羨ましいですこんちくしょうめ。

「よくはめられるな、オマエ……」
「つーかなんで仙崎まで聞いてんだ! 男子禁制だから! ガールズトークだから!」

うわあとすんごい顔をしている仙崎は中学からの腐れ縁で、なんだかんだよく喋るただのアホである。そして一言も二言も多いタイプ。


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