∞1208∞
ファミレスを出ると、
彼は頭をかきながらあたしにお決まりの台詞を吐く。

「やり直してくれへんか?」

あたしはこの瞬間、
いたたまれなくなる。


彼を恨んでなど無い。

過去は過去として、あたしはもう葬り去りたいのだ。

どうか幸せになってくれ
どうかもうあたしに何かを求めないでくれ


こんな変に曲がった感情は
どこに居たって付きまとう。


「ごめん」

「そうか。」


コウヤに微笑み、去って行く彼を
大きな夕日が呑み込もうと広大に朱を広げる。

目を細めてあたしは見送り
煮え切らない想いを携帯や財布と同じようにポケットに突っ込んで踵を返す。
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