香りから始まる恋はいかがですか?

「少し
夏の話をしてもいいかな?」

とお姉さんは言い、

「ぜひ、聞かせて下さい」と
俺がお願いすると

続けて
ゆっくり話し始めた。

「わたしたちの両親は
夏がまだ10歳のときに
離婚したの。

父親に他の女性がいて
出ていったのよ。

でもあの子は、
いまだ真相を知らないの。

わたしにはその頃から
圭介という存在が近くにいて
一緒にいてくれたから、
救われたけど、

あの子は、
ものすごいお父さんっ子で
父親のことが大好きだったから、
わたしも母も
本当のことは言えなくて。


あの子が知ってしまったら、
将来、男性を信じることが
できなくなるんじゃないかと
心配して、言わなかったの。

でもね、あの子はなにかを
感じ取っていたんだと思う。

自分が、
父親を大好きすぎたから
いなくなっちゃったんだ
って思うようになってて、

それがいまでも根底に
ずっとあるんだと思う。

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