あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
多分、世界一下手くそな嘘。



────2014年12月24日。


大学生活四年目の冬。クリスマスイブだというのにがっつり四時間の講義を受け、とぼとぼと一人寂しく歩いていた帰り道。

駅前の大きなクリスマスツリーの前で、彼女は突然現れた。


「……あの!」


後ろから声が掛かった。

ちゃんと聞こえていたけれど、呼ばれているのは自分ではないだろうと判断して、振り向くことなく歩き続けた。

すると、バタバタと聞こえてくる明らかに運動音痴な人だと分かるような足音。

その足音が止まったかと思うと、目の前には知らない女の子が立ち止まって俺を通せんぼしていた。

肩まであるミルクティーブラウンの髪に、くるりと丸い瞳。年は、俺よりも下に思えた。


「えっと……何?」


下を向いてもじもじとしている女の子に問いかけた。すると、女の子の動きがピタリと止まる。そして、彼女の頭がゆっくりと上った。

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