あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
本当の事を教えて






「いらっしゃいませー!」


黒色ののれんを両手で分けてくぐる。そうすると、すぐそこにいた男性スタッフが声を張った。続けて奥の方から「いらっしゃいませ!」と声が聞こえてくる。


「お好きな席へどうぞ!」

「あ、はい……」


黒いTシャツに、黒いエプロン。他の人よりも筋肉がついているのがTシャツ越しにも分かるような男性スタッフが数人。

そんな、少し男臭さを感じるここは……クリスマスイブには似合わない居酒屋だ。


「なんでここなの?」

「えー? いいじゃない。居酒屋」


お酒飲もうよ、とハル。

いつもはサラリーマンや若い男女で賑わう居酒屋も、流石に今日は空いている。

そりゃあそうだ。今日はクリスマスイブなんだから、みんなオシャレなカフェやレストランにでも行くのだろう。


「あ、私、これ!カルーアミルク!あとは枝豆と出し巻き卵ね」

「お酒大丈夫なの?」

「うん!多分!」

「あ、そう……」


付け足された『多分』という言葉が気になるけれど……まぁ、いいか。

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