婚約者は高校生
その申し出は受けるわけにはいかない。



「会社に来る必要はない。いつまた沙梨が来るかわからないんだからな」



これ見よがしにため息をつきながら言うと、彼女は押し黙った。

それにしてもなぜ彼女はそんなにも待たれるのが嫌なのだろうか。



「こっちも聞きたいんだが、俺が学校に行くことで不都合でもあるのか」


「不都合といいますか…多賀さんは目立つんですよ。私としては目立ってほしくないといいますか…」



それはなぜだ?
婚約者が自分以外の女に囲まれるのは面白くない、というのか?
…なんてな。地味に学校生活を送りたいとかそんなところだろ。
それなら制服姿の彼女と一緒にいるところを見られないようにするのは彼女の為でもあるだろう。
俺の場合は会社で、彼女の場合は学校という差はあるものの、制服姿の女子高校生とスーツの社会人という組み合わせを見られたくないという利害関係は一致している。

双方婚約者なのだからかまわないのではないか、と思うところもあるが、端から見て社会的にどう映るのか…と考えるところもあるし、彼女自身にも何か事情があるらしいことは伺える。

まあともかく人に見られたくないということは確かだ。



「…わかった。何か事情があるんだな」



そう言うと彼女はホッとしたような顔を見せた。
なぜそんな顔をするのか気にはなったが、まあ深く突っ込む必要はない。
なにせ彼女は仮の婚約者なのだから、俺の知らない所で何をやっていようがどうでもいい。
俺に何か関わることでなければな。

結局それを踏まえて、今後会う必要がある場合は校門ではなく近くのコインパーキングで待つということに落ち着いた。
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