婚約者は高校生
虫除けとして機能してもらうため…もとい、いつになるかわからない沙梨との約束を守るため、俺は彼女に連絡をとった。
いくら付き合っているといっても、学生である彼女を遅い時間に呼び出すわけにもいかない。そのため俺はなんとか定時に仕事を終わらせ、すぐに会社を後にした。

休みの日に話をすればいいのではないか、と思う人もいるだろうが、そんなことをしたら俺の睡眠時間が削られる。それに休日はゆっくりしたい。
休みの日は好きなことをして過ごしたい。それは誰もが思うことだろう。だから、俺は終業後の時間を彼女に充てることにした。…言い訳なんかじゃない。多分。

ともかく、カフェに彼女を連れてきた俺はことのあらましをざっと説明した。



「…というわけで、写真が必要になった」



話を聞いている間も、聞いたあとも彼女はなぜか不満顔だ。

何が気に入らないのかわからないが俺の睡眠を守るため、彼女には動いてもらわなければ。
まあ、彼女も学生の身でいろいろあるのかも知れないし、何か言いたいこともあるのかもしれない。仮初めとはいえ婚約者。悩みくらい聞くことも必要かもな。

俺はテーブルに置かれたコーヒーを手にしながら彼女を見た。



「…何か言いたいことがあるなら聞くが?」


「……多賀さんのところに嵐のような女性が来たことはわかりました。それについては私も協力します。でも、ひとついいですか」



彼女はひとつ息をつくとコーヒーを飲む俺をまっすぐに見た。



「多賀さん、どうして校門前で待っていたんですか?」


「は?」


言いたいことってそれか?
彼女の発言に拍子抜けして間抜けな声が出てしまった。

俺が校門前で婚約者である彼女を待っていたのが不満の理由なのか?
何がいけないんだ。足ウォッチングついでに彼女の虫除けになってやろうと思っていただけなのに。
…まあそれは俺が勝手に思っていることだろうと言われればそうだが、俺が校門前にいた理由を単純に言うなら…



「君を待っていただけだ」



ストレートに言うと、彼女は一瞬言葉を詰まらせた。



「……っ、それはわかっています。でも連絡してくれたらこちらから行きます」


「どこに?」


「会社にです」


会社に、ね。
会社は学校から数駅乗り継いだ先にあるし、学校後の彼女を来させるのは時間的に遅くなるし、時間がもったいないし、最近は暗くなるのが早くなってきた…わけでもないが、彼女一人を歩かせるわけにもいかない。

それに彼女は社長令嬢だ。
大事にされているであろう彼女を俺の都合で呼び出しておいて、何かあったらマズいだろ?
だから…
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