婚約者は高校生
彼女にさせた仕事は主に雑用。
忙しい俺に代わって山科が彼女に作業の仕方を教えていた。
そして俺は今、つかの間の休息中。
人がいないカフェスペースで壁にもたれるようにしながらコーヒーを飲んでいると、彼女が歩いて来るのが見えた。
ちょうどいい。
お祖父様とどういう繋がりがあるのかは知らんが、なぜ俺の部署で働くことになったのか聞いてみるか。
ただでさえ忙しいのに余計な煩わしさは持ち込みたくないしな。
早々に追い出さなければ。
「坂下さん」
呼んでみるとすぐさま彼女はこちらを見た。
「ちょっとこっちに来てくれないかな?」
笑顔を浮かべながらそう言うと、彼女は素直に俺の前まで来た。
「なんでしょうか?」
何を聞かれるのかも知らないで、澄んだ瞳で俺を見上げている。
俺は彼女のあごを軽くつかんで上向かせると、ぐっと顔を近づける。
いきなりの行動に彼女は驚いたように瞳を見開き、体をわずかに硬直させた。
「坂下さん…いや、瀬野尾姫紀。なんでここにいる?」
先ほどとはうって代わって俺は相手を冷たく睨み付け、地を這うような低い声をかける。
彼女は一瞬怯んだものの、負けることなく強い視線を向けてくる。
そして、ゆっくりと口を開いた。