婚約者は高校生
そしてその日から彼女は毎日午後からバイトに来るようになった。
学校のある彼女がなぜこの時間に来れるのか疑問に思っていたのだが、改めて採用シートを見てみるとテスト期間の1週間だけのド短期バイトだということがわかった。
1週間で俺の何がわかるというのだろう。
それはさておき、これはどういうことなのだろうか。
彼女は仕事中は俺の目に入る範囲内にいたが、特に目が合うこともない。
俺を知りたいと言っていたわりに、こちらを観察するような様子も見せずにただ仕事をこなしていた。
ある時は資料をまとめてホッチキスで留める作業。
ある時はコピーを頼まれ、そして今はサンプルの袋詰め作業をしている。
特にこれといった失敗は見られず、周りの人たちとのコミュニケーションもうまくいっているようで、ときおり笑顔をのぞかせる。
俺にはそんな顔を向けたことがないくせに。
「…部長?」
呼びかけられてハッとする。
「あ、ああ。それでここの項目なんだが…」
しまった。
今は書類のチェック中だったんだ。
………彼女が笑顔だからなんだっていうんだ。
彼女が失敗なく仕事をしているならそれでいいじゃないか。
まったく仕事中に何を気にしてるんだ、自分は。
彼女はただのアルバイト。今は社長令嬢ではない。
…今はそんなことよりも書類に集中しなければ。
俺は余計なことを振り払うように手元の書類に目を向けた。