婚約者は高校生
いつもよりやや高めの声に少しばかり甘えた瞳。

いつもとまったく違うテンション高めの彼女は女の子たちの姿が見えなくなるや否や、あっさりと姿を消した。

俺の腕にぴったりと寄り添っていたのは幻かと思うくらいに、今は数センチの距離をあけて隣を歩いている。

もちろん腕など掴んでいないし、手を握ってもいない。

先程出掛けるのが嬉しくて仕方ないといった感情を全身で表していた子と同一人物だとは思えないくらい今は冷静な顔をしている。


…なんだこの変わり身の早さは。


先程の言動が逃げるための口実だったのはわかる。
だけど、仮にもデートだろう?
よりによって「お兄ちゃん」はないだろう。



「…さっきの行動はいったいなんだ」



低い声でボソリと言うと、彼女はキョトンとした顔でこちらを見上げた。



「さっきの、とは?」



「とぼけるな。俺のことをお兄ちゃんと呼んだだろう」



「ああ、あれですか。あの場はそう言った方が良いかと思いましたので。妹と思っていたみたいでしたので、あの人たちが入る隙間もないくらいに甘えた妹を演じてみました」


成る程?
確かに兄にべったりな妹を連れている男についていきたいと思う女性は少ない…というか、ほぼいないだろう。

彼女の選択は決して間違っているわけではない。
それなのになんだ、この胸の不快感は。



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