婚約者は高校生
水族館内はほの暗く、水槽からの光だけが明るく通路を照らしていた。

おそらく展示物を際立たせる仕様なのだろう。

水槽から少し下がれば、手を繋ごうが、かすめるようにキスをしようがきっと周りに気付かれることはない。

恋人たちのデートコースには確かにもってこいの場所。


ま、それが昼間でなければの話だが。



休日のためか、水槽の前はちびっこたちで埋め尽くされていた。
魚が通るたびに賑やかな声が上がり、ムーディな雰囲気とは程遠い。

どちらかというと家族連れで来るところだ。


一応デート、ということにはなっているが…まあ、お子様にはこれくらいがちょうどいいだろう。



「水族館なんて久しぶりです!」



真ん中にある巨大水槽を前に彼女は少しばかり興奮ぎみに声を上げる。

瞳を輝かせながら言うということは、これがきっと素なのだろう。



「多賀さん、あれ、ジンベイザメですよ」



彼女は俺の袖を軽く引っ張り、水槽の中で一番大きい斑点模様のついた魚を指した。



「ああ、そうだな」



「コバンザメがお腹のあたりにいますよ!!仲良しなんですね」



魚に夢中になっている彼女は俺の袖をつかんでいることを忘れているのか、その手を離さない。

さっきまで微妙に距離が開いていたのが嘘のように今は近くにいる。


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