クレーマー
玄関を開けると家の前に花梨が到着した所で、あたしはホッと息を吐き出した。


「やっぱり、まだ家にいたぁ!」


花梨が寝起きのあたしを指さしてそう言った。


「えへへ。ごめんね」


あたしは頭をかきながら花梨に駆け寄る。


待ち合わせ場所はあたしの家からすぐ近くだったから、花梨は待たずにここまで来たようだ。


「まぁいっか。そんなに時間も過ぎてないし」


花梨に言われて時間を確認すると、約束時間を5分過ぎたところだった。


自分でもびっくりするくらい早く準備ができていたみたいだ。


「それに、知世が遅刻するなんてすっごく珍しいもんね!」


花梨が珍しい物を見るようにあたしの顔を覗き込んだ。


「遅刻なんて幼稚園の時にしたくらいだからね」


あたしは花梨にそう返事をした。


約束時間を守ることは社会人としての常識だ。


約束時間に守らない人は仕事でも信用されなくなっていく。


あたしはそれをしっかりと理解し、時間厳守を心掛けていた。
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