わたしの朝
ここにある幸せ
訃報が入った。
これで4件目だ。
結婚ラッシュがあり、祝福の声が湧く中、私の周りでは亡くなってゆく人も多かった。
歳も歳で、末期がんの人もいたが、中には友だちのお兄さんの突然死というのもあった。
私は、確かに刹那的な考えを捨てた。
「どうせ…」
その言葉を捨てた。
けれど、神も真理も捨てた私は、死者の復活も、楽園となる地上での永遠の命も、私の望む分ではなかった。
私が焦る理由はここにもあった。
私はこの命が尽きたら終わりだ。
責め苦に遭うこともなければ、永遠の命を得ることもなく、無に帰せられる。
だからどうって、私が死後に希望があったとして今を精一杯生きることには変わりないのだけれど、今ある命でなんとか最高度の充実感を味わおうなどと必死になることはなかっただろう。
どうしても、今ある命だけを頼りにしがちだった。
楽園への希望を抱いて、最期まで忠誠を保ち続けた人へ敬意を示すと共に、その人たちのお葬式にも出られない自分がやけに切なかった。
「明日は死ぬのだから」
まるで、そんなことを口にしているようにも思えた。
私は、幸せよ。
自分でこの道を選んだんですもの。
そう胸を張って生きたいというよりは、そう生きなければならない気がしていた。
不安だろうが虚しかろうが、もう大きな後ろ楯はない。
自分で自分の決定に責任を持つ時は、もうとっくに迫られていた。
だからといって、みんなが持つような楽しみを全て持って持て余して、この世をおおかするのは、私の望むところではなかった。
そう、彼とささやかな幸せを築き、2人でその幸せを噛みしめること。
ささやかでいいんだ。
些細でいい。
小さくていい。
ただそこにある幸せを2人で感じて、微笑み合えれば…。
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