御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中

直美の決断

「今日は帰りが遅くなるからもしご飯炊くなら俺の分はいらない」

「・・・わかった」

私は無意識に視線を反らしてしまった。

だめだ。

昨日の朝以来、私だけが過敏になっている。

抱きしめた側の鈴城君は何事もなかったように至って普通。


だけど私には男性との添い寝は人生初だった。

「あと十分」って言ったのに結局一時間も私を抱きしめたまま眠ってた。

なんで私の事なんとも思ってないのにあんなこと出来るんだろう。

熱があったから?

だったら病気になれば毎回優しく接してくれるの?

思いが一生届かなくて病気の時だけ優しくしてくれるんだったら

ずっと病気でもいいとさえ思える私って異常かな・・・・


とにかく最近の私たちの微妙な距離感に戸惑いを隠せない。

「プロジェクトのメンバーとの飲み会」

「え?」

「さっきから険しい顔してるからさ、理由を言っておこうと思ってね」

鈴城君はすれ違いざまに私の肩をぽんと叩くとそのまま玄関へ

「あっ・・・わかった」

慌てて返事する。

やっぱり私だけが一人でドキドキしたり、今みたいに肩を叩かれただけで

顔を真っ赤にしてしまうんだろう。

私は両手で火照った顔を覆った。

「お~い。行くぞ」

「あっ!待って」

一応夫婦だから一緒に出勤するんだけど・・・・あと何日一緒に出勤できるだろ。
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