御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「あの・・・返事っていつまでにすればいいですか?」

この結婚に愛情がないといっても結婚は結婚だ。

考える猶予ぐらいほしい・・・ゆっくり考えて・・・

「今決めてよ」

鈴城君は腕組しながら椅子の背にたれ、冷たい視線を送る。

「今?」
プロポーズってこんなふてぶてしい態度でされる物なの?

今まで思い描いていたプロポーズのイメージが鈴城君の態度で一気に吹き飛ばされたような気持ちになる。

「悪い話じゃないだろ。夫婦らしく振舞うのは会社のみ。芝居だと思えばいいし
それ以外は何もしなくていい。バイト代だって出るんだよ。何を悩む必要があるの?」

何だろう・・・もう訳がわからない。

NOと言えないこの空気。

そうさせたのは私が鈴城君の悪口を言ってしまったから?

だったら・・・・嫌いなふりして結婚した方がいいのかな・・・

というか、しなければいけない空気が感じられる。



あ~~あ・・・ずっと思い焦がれた相手がこんな腹黒だったとは・・・・・

だけど・・・入社式に咄嗟に手を差し伸べた鈴城君のやさしさは

嘘じゃななかったと思いたい。


「もし・・・私がNOと言った場合・・・・他に候補はいるんですか?」

「・・・・・社内にはいないけど・・・・NOというのなら探すよ。君みたいに
俺の事が大嫌いな人をね・・・・」


その瞬間私の心の中で『他の人とは嫌!』と思う自分がいた。

だったら

好きになってもらわなくてもいい・・・・

誰よりも彼に一番近い位置にいられるなら

それが愛情がなく・・・・進展の見込みがゼロだとしても



それが私の出した答えだった。
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