母と妻と女の狭間で・・・ 留学時代編
 私は、もとともと負けず嫌いで、激しい性格だったから、
自分が晴美に負けて、あさひを晴美に取られたことが、
どうしても我慢できなかった。

 寧子が、

「どうしたの?だいじょぶ?」

 って声を掛けるまでずっと、
2人の姿が心の白いスクリーンに映し出されて、
そこから目が話せなかった

「ん?ああ、だいじょぶよ」

 私が笑顔で答えると、寧子はすべてお見通しって感じで、
一言、

「たいへんだね」

 そう言いながら心配そうな顔を残して、
その場を離れていった。

 
 寧子に話を聞いた時は、私自身少し驚いたけど、
自分で驚くくらい冷静で、かえってそれが辛さを増した。

〈晴美がクラスを移るって言った瞬間から、
なんとなくわかってた事だもの〉

 そう、一番驚いたのは、晴美がクラスを変わりたい!
って言った瞬間。

 あの時は本当に驚いて、目の前が真っ暗になったけど、
それは、あの時すでに、こうなることがわかっていたから。

 あの時に確かな証拠があったわけじゃなく、
きっと晴美自身もそんな事は、まったく考えていなかった
はずだけど、ただの、勘、そう、ただ漠然とした雰囲気を
感じただけ。

 南の海の、どこまでも透き通る深い水の底にあって、
目の前に見えるのに、絶対に触れないような、
そんな感覚。
 
 晴美が、クラスを変わりたいと言った時に感じた事。
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