青と口笛に寄せられて


ある程度開けた場所まで移動し、犬たちと台車を繋ぐ。タグラインをリードに繋いだあと、台車に接続した。
来たばかりの頃にはメモをとることしか出来ずに覚えきれなかった専門用語も、今となってはすんなり頭に思い浮かぶ。


夜になると部屋でぐちゃぐちゃのメモを清書しながら、自分で訳が分からなくなり啓さんの部屋へおそるおそる聞きに行ったりしたんだった。
そのたびに心底嫌そうな顔をされたのは今でも忘れられないけれど。


「さて、準備出来たよ〜」


くるりと妹の方に向きを変えると、里沙がすっかり逃げ腰で徐々に後退していくのが見えた。


「こらこら!なんで逃げるのよ!」

「姉ちゃんの操縦なんでしょ?信用出来ないんだけど」

「もー!ちゃんと出来るから信じてよ!」


台車はソリと違って大きく、車輪がついているためソリよりもすんなり動く。
ソリほど加速はしないものの、それなりに速度が出るから妹でも楽しめると思ったのに。やる前から怯えられたのでは困る。


それに、大きな違いは乗せられる人数だ。
ソリは基本的にマッシャーを含めた大人2人乗りになるが、台車は広いので重さによっては3、4人乗ることも可能なのだ。
もちろん、人数が増えるほど引く犬も多く必要にはなるんだけど。


「騙されたと思って乗ってみてよ。ね?」


怖気づく妹の腕を無理やり引いて、台車に乗り込ませた。
私はハンドルを握り犬たちと呼吸を合わせる。


「ちょっと、姉ちゃん……」


と、里沙が何か言いかけたのは聞こえたけれど、それより先に「ハイク!」と指示を出した。


グンッと体が後ろに引っ張られるような感覚になり、ハンドルをギュッと握りしめる。
妹は準備も何もしていなかったため、ダイナミックに後ろへ転んでいた。
「わぁっ!」という悲鳴つきで。


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