青と口笛に寄せられて


東京では見たこともないほどの猛吹雪。
見渡す限り、白、白、白。
ホワイトアウトってこういうことを言うんだ。
怖い。知らない土地って怖い。


おんぶされたことによって私よりもだいぶ背が高いであろうその人の背中で、いつもよりも高い視点で。
そんなことを思った。


風の音と、サクサク雪を踏みしめる足音。
そして、犬の吠える声。

………………ん?
犬の吠える声?


一瞬にして頭が現実に戻った。


少し先に、犬がいる。
1、2、3、4……
全部で4頭………………。
シベリアンハスキーみたいな犬ががっちりハーネスをつけて、みんなでこちらを見ている。ワンワン吠えながら。
彼らの後ろに見えるのは、大きなソリ?


おんぶされていた私の体はあれよあれよと持ち上げられて、ソリの布で覆われたカゴみたいな部分にドサッと下ろされた。
手早く体にベルトみたいなものを巻き付けられ、寝袋のようなおっきな袋に包まれてカゴに固定された。


犬たちは私には見向きもしない。
連れてきたさっきの人にパタパタ尻尾を振って、健気に指示を待っている。


え、移動するのって、スノーモービルとかじゃないの?
これって、これって。
テレビでしか見たことないやつじゃないの?


すっかり混乱しきった私をよそに、顔の見えないあの人がよく通る声を出した。


「ハイク!」


同時にグインッと体に負荷がかかった。
後ろへ重力を感じて、慌てて持っていかれないように両手で布を掴む。
気づかないうちに「ぎゃあ!」と悲鳴を上げていた。


< 2 / 257 >

この作品をシェア

pagetop