青と口笛に寄せられて


頃合いを見て「ハー!」と声をかけたら、それに合わせて犬たちが左へ曲がった。
妹の肩を叩き、


「左に体を倒して」


と伝える。
戸惑いながら言われた通りに左側に体を倒した妹と共に、私も左へ重心を傾けた。
速度を落とすことなく綺麗に曲がることが出来て、犬たちの走りも順調だ。


「ごめんね。言ってなかったんだけどカーブでは遠心力が働いちゃうから重心を移動させるのよ」

「へぇ〜、なるほどね」


啓さんの受け売りをそのまま里沙に伝えると、彼女は感心したようにうなずいていた。


そして、聞こえるか聞こえないかくらいの大きさでつぶやいた。


「姉ちゃん、かっこよく見えるね」


一瞬、聞き間違いかと思った。


里沙はいつだって私を姉として見ないで、むしろちょっとバカにしたように斜に構えているところがあった。
けなすことはあっても、褒めることなどほとんど無かった。
それが、なんとまぁ「かっこよく見える」だなんて。


こんなに嬉しいことはない。


「そうかな。ありがとう」

「生き生きしてるもん。東京じゃそんな顔見たことなかった。本当にやりたいことに出会えたんだね」


里沙が、少しだけ寂しそうに笑った。


どうしてそんな顔をするのか疑問に思ったけれど、深く追求もしなかった。












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