青と口笛に寄せられて
「ちゃんと名前覚えろよ。こちらが竹下さんで、こちらが新庄さん」
井樋さんが紹介してくれた竹下さんは、40代後半くらいでメガネをかけた小柄な男性。そして、新庄さんというのが30代半ばくらいの長身だけど小太りの男性だった。
共通して言えるのはどちらもものすごく優しそうで朗らかな笑顔っていうこと。
ここに勤める人は、見事なまでにみんな優しい笑顔をしている。
非常にスパルタな井樋さんを除いて。
「滝川深雪です!改めてよろしくお願い致します!」
「深雪ちゃん、よろしくね〜」
「頑張ってね、深雪ちゃん」
2人とも早速私の名前を呼んでくれた。
ありゃ〜、嬉しいぞ〜。
仲間って感じがして胸が弾む。
「啓くん、あまりいじめるなよ」
という竹下さんのありがたいお言葉に対して、井樋さんはフッと鼻で笑ってうなずいていた。
その対応がちょっと怖いんですけど。
本当にいじめないでほしい。
「あぁ、そういやあんた、ペラいダウンしか持ってないんだべ?」
玄関でブルーのダウンジャケットとニット帽と手袋を身につけた井樋さんが、青い瞳で私の頭のてっぺんから爪先まで眺める。
なんとなく直立不動でその場に立っていたら、彼は思い立ったようにつぶやいた。
「仕事終わったら買いに行くべ。防寒着一式」
「は……、はい。何時くらいに終わるんですか?」
「ソリの客が帰って片付けが終われば、かな。まぁ事情話して俺たちだけ先に上がらせてもらえば早めに行けるしょ」
「はぁ……そうですか……」
俺たち、っていう表現をしてるから、買い物には井樋さんが同行してくれるってことなんだよね、たぶん。
むしろ教育係も彼なのだろうか。
だってすでに当然のように一緒にいるし。
毎日常に貶されながら仕事をしなければならないってことか〜。
気合が必要だぞ……、頑張れ私。