正義の味方に愛された魔女1
8 触ってよ、百合さん
カランカラ~ン♪



ドアベルがなって荒川さんが入ってきた。



「百合さん、盗み?この店で?
珍しいなぁ。
よっぽど価値有るモノだったとか?」



「そうそう!価値ありまくり!

ヒマちゃんとラリちゃんは天然モノで希少価値でグレードだって最高で……とってもいい子達なの。



商品ケースに入れておいたのに何故?

今頃ヒマちゃんとラリちゃん、誰かに傷つけられてないかしら……心配だぁ。

あー、どこ連れていかれちゃったのかなぁ~?



荒川さん、見つかる?あの子達ぃ」



「百合さん、だいぶ動揺しているみたいだけど、大丈夫?

えっと、君はアルバイトの…」



「石川沙耶です。

百合さん、天然石好きですから…さっきからこんな感じでおかしくなってるんです。
たまに変ですよね?」



「え?あぁ…そうだね、でも好きなモノに囲まれて、手作りして、好きなものを販売する……幸せなことだよ。

変な女に変貌するのは、今に始まった事じゃないし」



「あれ~?正義の味方の荒川さんが私の陰口を叩くなんて、聞き流すわけにはいかないわ。成敗してくれよう!」



手刀を荒川さんの頭上めがけて振り上げた私は、一瞬固まり、そのままその手を脇に下ろした。



「ま、まぁ、言動が子どもなのは認めるわ。
おかしくなるのも。

だけど変な女って言ったぁ!

沙耶ちゃぁん、荒川さんが私のこと変な女って」



「ゆ、百合さん、だからそういうのが、荒川さんに毒づかれる原因なんですってば!」



逃げた。セーフ。

荒川さんにチョップかますとこだった。
アブナイアブナイ。



と、思ったら肩を押さえられてしまった。
ふわっと優しく、だ。



ギャー!荒川さん、お願いだからそんな風に触らないで!



ダダ漏れだよぉ!

一度にたくさん気持ち流さないで…。



とっさに肩にあった手を振り払って、ホールドアップ体勢をとってしまった。



「百合さん、被害届け出すよね?

ま、落ち着いて座って?」



ちょっと不機嫌な荒川さんが対面に座った。



「あ…はい、お世話になります」



す、座ります。

はい、落ち着きますよ。

そして、
今、視えた溢れるほどたくさんの想いは、
一旦、気のせいだと思うことにします。

無理でもそうしないと、こんなの、恥ずか死ぬ!



《まったく、いつまでたっても可愛い人だ…。



百合さん、やっぱり俺に触るの避けてるな…。



これは気のせいじゃなく、絶対気付かれてるってことだよな?



どうせならはっきり伝えてしまおうか?

だけど百合さんは、俺のことどう思ってるんだ?

こっちの気持ちはバレバレなんだから、
これはもう、早いとこ腹をくくるしかないな…》








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