お願いだから、つかまえて
佐々木くんはすたすたとコンビニに入っていく。
どこまで本気でどこまで冗談なのかわからない、と思ったけれど、下着を無造作に掴んだ後に、本当にゴムも手にしている。
こ、こんな朝から。店員さんもびっくりだろう…
なんでいつも、けして堂々とはしていないのに、ポーカーフェイスなんだろう。すごく自分のリズムで生きている。そういう感じはたまらなくおかしくて、だけど好きで、それからとても楽だ。
佐々木くんは何食わぬ顔で買い物を済ませて、私達はまた手を繋いで家に戻る。
「お祖母さんはいつまで入院してるんですか?」
「ちょっとまだわからないんですけど、たぶん、1週間くらいなのかな。」
「毎日通うんですか。」
「できる限りそうしたいです。」
「そうですか…」
佐々木くんは繋いでいないほうの手で眼鏡の真ん中を押さえて何やら思案している。
「…僕としては」
「はい。」
「ある程度の時間を理紗さんと過ごしたいと思っていますが…」
「………」
何この人。
顔を赤らめもせずぽんぽんそういうこと言うんだ。
彼女じゃないからって、私も色んなことを言わないできたけれど。
彼もきっと、彼氏じゃないから、言わないでいてくれたことがいっぱいあるんだろうな。
「…ごめんなさい、そうですよね。ていうか、私もです。でも、お祖母ちゃんが退院するまではなかなか…」
「お見舞いは、ご迷惑にならない程度に随行させて頂くとして…もし、これもご迷惑でなければですが…僕がこっちに入り浸っても構いませんか?」
「………」